秋田にフィルムコミッションを

秋田にフィルムコミッションを

秋田にフィルムコミッションを

1.フィルムコミッションとは
(1) 欧米で始まったFC
最近「フィルムコミッション(FC)」という言葉を耳にするようになった。
フィルムコミッションとは、映画等のロケーション撮影をスムーズに進めるため地域ごとに設置され る組織である。欧米ではフィルムコミッションが多数活動しており、「事実上、フィルムコミッションがない地域でロケ 誘致は不可能」と言われる。フィルムコミッションの連絡組織として国際フィルムコミッション協会(AFCI)が設立さ れ、1999年現在、23か国、260以上の組織が加盟している。

 

(2)フィルムコミッションの活動内容
フィルムコミッションは、主に次のような活動を行う。
@ 撮影の誘致 地域に映画やテレビドラマのロケを誘致するために、その地域の魅力や、映像制作にとっての優位性、撮影への支援活動をPRする。
A 撮影の支援 ・ ロケに関する案内・情報提供 ・ 撮影に関する警察などの許可・届け出等手続きの窓口一本化 ・ 宿泊、関連業者、エキストラの紹介、斡旋など

 

(3) フィルムコミッションの目的、効果
各地域がフィルムコミッションを設立するのは、もちろんロケ誘致により地域にメリットがあるからで ある。具体的には、次のように直接、間接に様々な効果が期待できる。
@ 撮影が行われることによる消費需要(宿泊、飲食、サービス)発生
A 地域の映像関連産業の振興
B 地域の映像が国内、国外に配信されることによる地域PR
C 観光客の増加による消費需要増加
D 地域の魅力の再発見、地域住民の積極的参加による地域活性化

 

(4) フィルムコミッションの組織形態
このようにフィルムコミッションとは、「地域経済、文化の活性化」という公的な(非営利の) 目的を持つ組織であるが、その形態は、
@ 行政組織(自治体)内に設置する
A 行政と民間が協力して設置する
B NPO(非営利活動法人)として設置するなど、様々である。

 

2.日本各地で広がるフィルムコミッション設立の動き
わが国では平成12年2月に、日本でのフィルムコミッション設立を目的に、映画関係者、地方自治 体(夕張市など)関係者、省庁(通産省、運輸省など)関係者などによって「フィルムコミッション設立研究会」が発足した。最近はテレビ番組「ニュース・ステーション」で取り上げら れたこともあって一般の人々の間でも関心が高まっている。国内でのフィルムコミッション設立とし ては、平成12年2月に大阪で日本初のフィルムコミッション「大阪ロケーション・サービス協議会」が 設立されたのに続き、同年9〜10月には「神戸フィルムオフィス」、「北九州フィル ム・コミッション」、「横浜フィルムコミッション」が相次いで設立された。このうち横浜 神戸、北九州は、市役所主導の形で設立され、大阪はUSJ(ユニバーサル・スタジ オ・ジャパン)との相乗効果も期待して、大阪府、大阪市、大阪商工会議所など行 政・民間の協力により設立された。また東京都では、都が所有・管理する施設の撮 影に関する情報提供や許可申請の受付けを行う「東京ロケーションボックス」を13 年4月に都庁内に開設しており、一種のフィルムコミッションと捉えられる。さらに、これ以外にも北 海道など各地でフィルムコミッション設立に向けた動きが進んでいる。

 

3.横浜フィルムコミッションの事例
(1) 設立までの経緯
フィルムコミッション先進地の一つ、横浜の例をみてみよう。
きっかけとなったのは、映画監督の篠田正浩氏から横浜市長に対し「横浜で映画撮影した時に行政関係だけでも多数の 許可が必要だった。手続きを簡便にしていただくと撮影しやすい。」との提案がされ たことだった。 その後、市役所内において市長からの指示に基づき、フィルムコミッションに関する検討会や関係 者の協議などを経て、平成12年10月にフィルムコミッション設立に至った。設立準備では、横浜市 経済局観光コンベンション課が中心になったが、フィルムコミッション設立後の運営は(財)横浜観 光コンベンション・ビューローが行っている。準備段階では、当初はフィルムコミッション設立の意義 がなかなか理解されないなどの困難があったが、啓発活動などによって「ロケ誘致 は地域全体にとってメリットがある」との認識が庁内に広がったことで関係者の協力もスムーズになった。
(2) これまでの実績
横浜は映像制作者が集中する東京に近いこともあり、設立から13年3月末までの6 か月間で、2本の連続ドラマを含む316件もの撮影を支援している。 従来は撮影が困難であった場所の撮影許可がおりやすくなったことや、市内商店街、企業の協 力体制が整ってきたことにより、映画、テレビ制作者の好評を得ており、実際にフィルムコミッションが あることがロケ誘致につながっている。

 

4.秋田県におけるフィルムコミッションへの期待
(1) 秋田県の独自性、魅力
これまで設立されたフィルムコミッションは大都市型であるが、ロケ撮影には、当然ながら自然、田園 風景、祭りなどのニーズもある。したがって四季が明確で海、山、湖など自然に恵まれ、祭りなど文化も豊かな秋田県は、そのようなニーズを満たす土地としてロケ誘致の可能性が大きい。 実際に県内では、ここ数年だけをみても「大往生」(二ツ井町)、「アカシアの町」(小坂 町)などの映画が撮影され、最近公開された映画「五条霊戦記」の撮影では鳥海山麓 (象潟町)で長期ロケが行われている。
(2) 期待される地域への効果
県では「あきた21総合計画」において観光誘客に意欲的な目標を設定しているが、そ の達成には宣伝、PRをもっと積極的、効果的に行う必要がある。そのためにはフィルムコミッションによる映像制作の誘致も有効な手段となる。 また、今年開設される秋田−ソウル定期航空路を活かすためにも、国際的な映画撮 影のロケ地となれば効果は大きい。実際に、日本映画「ラブレター」が韓国の若者にヒ ットしたことから、撮影地の北海道に誘客効果が出た例もある。 ひいては、企業や定 住者の誘致のためにも、秋田県を舞台にした映像が広く発信されれば、地域に理解、 親近感をもってもらうとことが期待できる。
(3) 秋田にフィルムコミッションを
全国的にフィルムコミッションが関心を集めるにつれて、県内でもフィルムコミッション設立を目指す動きが民間、行政の双方で起こっている。 秋田県・観光課では、フィルムコミッション設立に向けた検討を進めており、民間においても観光関係者 や、商工団体の若手、映画ファンのサークル等の間でFCを研究する動きが出ている。 このような動きが広がって県民の間でフィルムコミッションの意義が理解され、フィルムコミッション設立、さらにロケ誘致による地域活性化へと繋がることを期待したい。


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